リヒテンシュタイン公

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:43 リヒテンシュタイン公国は、スイスとオーストリアの間にある小国である。日本人の多くには、『ルパン3世・カリオストロの城』のカリオストロ公国のモデルといった方が通じるかもしれない。

カリオストロ公国は表向きは観光地、裏では偽札造りを稼業にしていたが、リヒテンシュタインも表向きはアルプスの小さな観光リゾート地だが、税金逃れ地としても知られる。LGTという有名な投資銀行があるのだが、この銀行、周辺諸国のお金持ちに隠し口座を提供して、お金を集めているといわれてきた。



その銀行の書類が流出したのである。持ち出した、というか、盗んで逃げた元銀行員からドイツの税務当局が7億円で買い、それを手がかりに、すでに45億円以上を追徴課税。「いい投資だった」と上機嫌でジョークを飛ばし、太っ腹なことに、他国の税務当局に情報提供までしてくれるらしい。



真っ青になったのはリヒテンシュタインである。摂政アロイス殿下は早速「犯罪行為だ! 主権侵害だ!」とコメントを出したが、なにせことは税金。軍艦や大砲に消えた昔ならともかく、今や年金や諸生活手当の財源である。周辺諸国の有権者からすれば、どっちが泥棒なのさ、ってな感じだろう。

もっとまずいことがある。この銀行、リヒテンシュタイン公家の持ち物なのだ。国立銀行ではない。立派な私有財産である。公家は公国の絶対君主だが、国からは一銭ももらっていない。いろいろ企業を経営していて、それで生計を立てているという、君主の鏡みたいな人たちである。その中心がLGTで、公国の公式ホームページ--もち/である(笑)--でも先進的金融企業として麗々しく登場し、公家が優れた経営者でもあると宣伝している。



それが実は脱税の手助けをやってた、というだけで十分笑える話なのだが、さらに裏があるようだ。LGTは投資業務もやっているが、預かった金のかなりはスイスの銀行にそのまま送っているらしい。つまり、主な収益源は投資収益ではなく、脱税用のトンネル会社、すなわちマネーロンダリングの手数料!?

それを公家がやっている、となれば、要するにリヒテンシュタイン公国自体が脱税企業みたいなもの。君主の鏡どころか、マネーロンダリング会社の経営者一族が、逮捕されないために国ももっている、という話になる。



リヒテンシュタイン公家はぽっと出の土豪の家柄だが、場所が場所だった関係で、プロイセンのドイツ統一にもひっかからず、ナチスのオーストリア併合の際もスイスにすり寄って逃げ切った。爵位の正味は田舎の伯爵兼男爵だが、王家が少なくなった今の西欧では、希少価値もでたようで、アロイス殿下の妃は元のバイエルン王家、ヴィッテルスバッハ家の出身。すっかり由緒正しい貴族気分だったのに、犯罪者か詐欺師ファミリーになりかねないのだから、とんだ大事件である。



今もドイツとリヒテンシュタインは水面下で交渉中のようだ。問題の書類は違法なやり方で持ち出されたようだが、もしそこにLGTが投資ならぬトンネル会社だという証拠があれば、公家も公国もふっとびかねない。

ドイツの税務当局は以前からなんとかしたがっていたようだし、政権与党のSPDも人気取りの良い材料。まずい話は黙っておいてやるから、ドイツ人の預金情報は裏でこっそり流せとか、CDUの政治家の隠し口座をぜひ教えろ、などとやっている最中だろう。周辺諸国にも情報提供するという太っ腹も、「ネタはやるからうるさくいうな」という口止め料だとすれば納得。

カリオストロ伯爵もきっと地獄で大笑いしているだろう。



ちなみにリヒテンシュタインに湖はない。だから、悪事がばれてもゴート人のお城は出てこない(まあ狭山湖の下にも城はなさそうだが)。泥棒志願の美少女のお姫さまも、いらっしゃらないようである。




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このページは、scottが2008年3月17日 11:00に書いたブログ記事です。

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